近年、新たな資金調達方法として注目を浴びているファクタリング。
中でも後払いファクタリングは、2021年ごろから給料ファクタリングに代わる手段としてにわかに登場しました。
この記事では、後払いファクタリングの仕組みや違法性、メリット・デメリットなどを解説します。
後払いファクタリング自体は違法ではありませんが、金融庁が注意喚起を促しており悪徳な業者には注意が必要です。
この記事でしっかりと知識を身に付け、安全に利用しましょう。
後払いファクタリングとは?売掛債権や給料を買い取ってもらう方法との違いを解説
後払いファクタリングとは、利用者が後払いで商品やサービスを購入したあと、ファクタリング業者に買い取ってもらうことで現金を調達する方法です。
商品やサービスの売却時には、購入代金から手数料を差し引いた金額が振り込まれます。
商品の代金を後日支払えば、一連の取引は完了です。
後払いファクタリングは、一般的なファクタリングや給料ファクタリングとはいくつかの点で異なります。
以下では、それぞれのファクタリングとの違いを解説します。
通常のファクタリングでは売掛債権を買い取ってもらう
後払いファクタリングでは商品やサービスを買い取ってもらいますが、通常のファクタリングでは売掛債権を買い取ってもらいます。
売掛債権とは、販売した商品やサービスの代価を回収する権利です。
例えば入金が1ヶ月後の売掛債権を持っている場合、ファクタリング業者に請求書を買い取ってもらうことで最短即日で売掛金を手に入れられます。
債権の買取時に手数料が引かれる点や、本来の売掛金が入金されたら業者に支払う点は同じです。
業者に支払う売掛金は、自分が業者に支払う方法と、ファクタリング業者が売掛先から直接回収する方法があります。
通常のファクタリングは債権譲渡契約に該当し、法律でも認められています。
ただし請求書を使った掛取引を行うのは、主として法人や個人事業主のため、会社員は通常のファクタリングを利用できないケースがほとんどです。
給料ファクタリングは給料を買い取ってもらう
給料ファクタリングは、その名の通り給料を買い取ってもらう形式のファクタリングです。
振込予定の給料から手数料を引いた金額を業者から振り込んでもらい、給料が振り込まれたら業者に支払います。
後払いファクタリングとの違いは上記くらいで、その他の点で大きな違いはありません。
例えば会社員(個人)でも利用できる点や、会社にバレずに利用しやすい点は両者の共通するメリットです。
ただし給料ファクタリングはその仕組み上、実質的に貸金業に該当するとの判決が出されています。
貸金業を営むには財務省や都道府県知事への届け出が必要です。
しかし給料ファクタリング業者のほとんどが無登録だったため、事実上給料ファクタリングは違法であるとみなされています。
参照:裁判所|令和4年(あ)第288号 貸金業法違反、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律違反被告事件
後払いファクタリングは違法ではないが貸金業にならないよう注意が必要
結論を言うと、後払いファクタリングは違法ではありません。
後払いファクタリングは形式上、商品やサービスの転売であり、転売自体に違法性はないためです。
ただし形式的には商品の転売であっても、実態として貸金業とみなされるケースがあります。
貸金業であるとみなされる具体的なポイントは、以下の通りです。
- 商品の購入を目的としていない
- 買取金額と商品の価格の差が高額
- キャッシュバックの名目や指定の業者から商品を購入する
- サービス利用にあたり、利用者の支払い能力の審査が行われる
仮に貸金業であると判断された場合、無登録で営業を行っていると罰則の対象となり、その業者は闇金です。
このような悪徳業者を利用すると、高額な手数料を取られ経済状況が悪化したり、個人情報を悪用されたりといったトラブルに巻き込まれる可能性があります。
後払いファクタリングを隠れ蓑とする闇金については、金融庁や消費者庁も注意喚起を行っています。
「即日現金化」「ブラックOK」などの甘い言葉に釣られないよう、心がけましょう。
後払いファクタリングの3つある取引方法の具体的な仕組み
後払いファクタリングには、大きく分けて以下3つの取引方法があります。
- 商品転売型
- キャッシュバック型
- 宣伝報酬型
いずれも商品を後払いで購入する点や、無形商材でスピーディーに取引を進められる点は共通していますが、利用者にお金が渡る名目に違いがあります。
具体的にどのような仕組みになっているのか、詳しく見ていきましょう。
商品転売型は指定した商品を後払いで購入しその商品を売却する方法
商品転売型は、業者が指定した商品を後払いで購入した後、その業者に商品を売却して現金を調達する方法です。
やり取りする商品は無形のデジタルコンテンツが主流のため、自宅に商品が届くことはほとんどありません。
申し込みをしたら、そのまま現金が手に入るイメージです。
ただしApple製品など一部高額で有形の商材を扱う場合は、自宅に商品が届くケースがあります。
商品の購入から売却までは同じ業者が対応するため、スピーディーに振り込んでもらいやすいのが特徴です。
後払いで購入した商品の代金は、期日までに支払わなければなりません。
商品の購入から売却まで業者が代わりに行ってくれるタイプを、特に「転売代行方式」と呼ぶケースもあります。
ない商品が実際に存在しない場合は転売とは言えず、金銭の貸し付けとみなされることがあります。
キャッシュバック型は商品購入の特典の名目でキャッシュバックを受ける方
キャッシュバック型とは、商品購入の特典の名目でキャッシュバックを受ける形で現金を調達する方法です。
購入する商品はデジタルアートやデジタルコンテンツが中心なので、現物の商品は原則届きません。
購入代金とキャッシュバック金額の差額が業者の手数料になります。
商品の購入後30分以内にキャッシュバックがされるケースが多く、即日で現金を調達したい人に向いています。
後日商品の購入代金を支払えば取引が完了です。
宣伝報酬型は購入した商品の口コミを投稿し報酬を受け取る方法
宣伝報酬型は、購入した商品の口コミを投稿し、報酬として現金を受け取る方法です。
報酬の金額は商品価格の6~7割程度が相場とされています。
レビューの投稿には特別なスキルは不要で、1分程度で書ける内容のため文章が苦手な人でも問題ありません。
購入する商品は情報商材やFXの自動売買ソフトが多い傾向です。
デジタルコンテンツの商品ならその場で手に入るため、すぐにレビューを投稿すれば即日で報酬を受け取ることも可能です。
宣伝報酬型は「インフルエンサーマーケティング」や「ディストリビューター」と呼ばれるケースもあります。
後払いファクタリングのメリット3点
後払いファクタリングを利用するメリットには、以下の3点が挙げられます。
- 信用情報に影響がない
- 会社にバレにくい
- 最短即日で現金を調達できる
個人が資金を調達する代表的な方法に、消費者金融をはじめとするカードローンがあります。
しかしカードローンはいくら言葉を変えても借り入れであることには変わりないため、多くの人が抵抗を感じるでしょう。
対して後払いファクタリングは原則借り入れではありません。
後払いファクタリングは、カードローンに心理的抵抗を感じている人や、信用情報に自信のない人の受け皿として広まっています。
それぞれのメリットを詳しく解説します。
借り入れでないため信用情報に影響がない
後払いファクタリングの大きなメリットの一つは、信用情報に影響がない点です。
後払いファクタリングは借り入れではないため、申込時に信用情報を照会したり、利用した事実が信用情報機関に記録されたりしません。
そのため過去に支払いの長期滞納や、自己破産をして金融機関からの借り入れができない人でも利用できます。
すでに多額の借り入れがあり、総量規制に抵触している人も利用可能です。
「新規の借り入れはできないけれど、支払いのために数万円だけ必要」といった場合に活躍します。
クレジットカードを持っていなくても、バンドルカードやPaidyなどの後払いアプリがあれば利用できるサービスがほとんどです。
ただし商品の購入代金が払える資金力があるかの簡単な審査は実施されます。
在籍確認が原則なく会社にバレにくい
後払いファクタリングを利用した事実が会社にバレにくいのも魅力の一つです。
後払いファクタリングは借り入れではないため、カードローンでよくある在籍確認は原則ありません。
さらに購入する商品はデジタルコンテンツが中心のため、購入後に自宅に届いて家族や同居人に怪しまれる心配も不要です。
手続きがオンラインで完結し、書類のやり取りが不要な点もバレにくさを助けています。
対応が速い業者なら最短即日で現金を調達できる
後払いファクタリング業者のほとんどは、最短即日融資に対応しています。
対応が速い業者なら最短数分から10分程度で現金を振り込んでくれるため、急いでいる人にもおすすめです。
後払いファクタリングに必要な書類は、身分証や通帳などですぐに用意できるので、当日の支払いに間に合わせたい場合にも重宝します。
多くの業者が24時間365日申し込みを受け付けており、モアタイムシステムを採用している金融機関の口座を持っているなら即時に入金が反映されます。
後払いファクタリングのデメリット!注意する必要がある3点
後払いファクタリングは便利な側面がある一方、以下の点に注意する必要があります。
- 手数料が高い
- 法律が十分に整備されていない
- 悪徳業者に注意が必要
後払いファクタリングは現状違法ではありませんが、グレーゾーンであることには間違いありません。
そのため今後の法整備次第では、利用の条件が厳しくなったり、最悪の場合違法化されたりする可能性もあります。
加えてグレーゾーンのスキームであることから、悪徳業者が紛れ込んでいる確率も高まります。
自分の身は自分で守る意識を持ち、利用前にはしっかりと安全性を確認する姿勢が重要です。
手数料が低くても10%程度で高い
後払いファクタリングの手数料は低くても10%程度、高いと20%を超える場合があります。
もっとも、通常のファクタリングでも10~20%の手数料がかかるため、ファクタリングの中では特別高くありません。
しかし手数料が10%でも、金利に換算すると120%となり、利息制限法を優に超える水準となります。
上記を踏まえると、ファクタリングに頼るのは禁物です。
毎月のように後払いファクタリングを利用すると、慢性的に家計が悪化し、抜け出せなくなる可能性があります。
後払いファクタリングは単発または本当にピンチのときに限った利用に留めるか、根本的な家計の見直しが求められます。
法律が十分に整備されておらず利用者が保護されにくい
後払いファクタリングは数年前から台頭してきたスキームのため、法律が十分に整備されているとは言えません。
後払いファクタリングは給料ファクタリングに代わって登場した背景があります。
給料ファクタリングは実質的に違法との見解がなされているため、後払いファクタリングも同じ道をたどる可能性があります。
法整備が進んでいないもう一つのデメリットは、利用者が法律によって保護されにくい点です。
悪徳業者を裁く法律が明確でないために、被害を受けた際に専門家をもってしても十分な補償を受けられない可能性があります。
後払いファクタリングを利用する際には、上記の点も留意しておく必要があります。
高すぎる手数料を取るような悪徳業者に注意が必要
後払いファクタリングを謳う業者の中には、悪徳業者がまぎれているケースがあるので注意が必要です。
悪徳業者は50%程度の高すぎる手数料を取り、支払いが滞ると強引な取り立てや脅迫、個人情報の流出などのトラブルに巻き込まれる可能性があります。
悪徳業者は一見して見分けにくいですが、以下のポイントを参考に判断しましょう。
- 「ブラックOK」「審査なし」など、甘い言葉を全面に押し出していないか確認する
- 公式サイトに会社情報(住所・固定電話番号・代表者名など)が明記されているか確認する
- 手数料が目安として20%を超えていないか確認する
- そもそも契約書を交わしているか、契約書が「売買契約書」になっているか確認する
- 会社情報を確認するときには、運営歴が長いかどうかも重要です。
運営歴が長い会社であれば、それだけ健全に運営されていると判断できます。
契約書については、特に「金銭消費貸借契約書」になっていないかをチェックしましょう。
金銭消費貸借契約は貸金業の契約内容のため、そもそもファクタリングではなく、無許可で営業していたら闇金です。
後払いファクタリングを利用する一般的な流れは?多少の違いはある
後払いファクタリングを利用する際の一般的な流れを解説します。
商品転売・キャッシュバック・広告宣伝型かによって多少の違いはありますが、通常は以下の流れで手続きを進めます。
- 公式サイトから申し込む
- 身分証や通帳などの必要書類を提出する
- 商品の購入価格と売却額(キャッシュバック率または報酬)が提示され、契約する
- 商品を購入し、現金を受け取る
- 商品の代金を決済する
商品の決済日については、翌給料日か1ヶ月以内に設定されるケースがほとんどです。
手続きはオンライン上で完了できますが、契約書の締結は行います。
契約書なしで取引を進めようとする業者は悪徳業者の可能性があるため、契約書の有無は必ず確認しましょう。
後払いファクタリングでトラブルにあったら弁護士に相談しよう
利用している業者が悪徳であると分かった場合や、支払いに関してトラブルが発生した場合は、弁護士に相談しましょう。
弁護士は利用者と業者の間に入り、問題の解決に向けて交渉を行ってくれます。
弁護士が間に入ることで取り立て行為をストップさせられるので、止まない取り立てや執拗な連絡に悩まされている人も安心して生活が送れるようになります。
悪徳業者に1人で立ち向かっても、状況をより悪化させ、精神的にも悪影響を及ぼす可能性があるため得策ではありません。
法律の専門家を味方に付けていれば、相手も下手な行動は取れず、それだけで抑止力になります。
弁護士以外にも、警察や消費生活センターなどの相談先があります。
トラブルに遭ったら、1人で悩まず専門家に相談しましょう。
後払いファクタリングを利用する際に出るよくある質問
後払いファクタリングを利用するにあたって、よくある以下の質問に回答します。
- 在籍確認はある?
- 手数料の相場は?
- 商品は自宅に届く?
- 後払いファクタリング以外の資金調達方法は?
特に在籍確認や商品が自宅に届くのかなど、周りにバレないかどうかは多くの人が気になるところです。
以下で疑問を解消し、賢く後払いファクタリングを利用しましょう。
後払いファクタリングの利用時に在籍確認はある?
後払いファクタリングにおける在籍確認の有無は、業者によります。
後払いファクタリングでは最終的に商品購入の決済ができるかどうかが重要なため、決済ができる資金があるかの調査が行われるケースがあります。
ただし多くの業者で在籍確認は不要で、審査不要で利用できる業者も多いです。
後払いファクタリングの手数料の相場はどのくらい?
後払いファクタリングの手数料の相場は10~20%です。
多くの業者のサイトでは「還元率」や「換金率」で表示されています。
中には最大還元率として1.5%程度の手数料を掲載しているサイトもありますが、まれなケースとして参考程度に思っておく方がよいです。
逆に手数料が20%を超えると悪徳業者の可能性があるため、しっかりと会社情報を調べる必要があります。
後払いファクタリングで購入した商品は自宅に届く?
購入する商品がデジタルコンテンツなら、自宅に届きません。
特に即日入金に対応したプランであれば、原則として商品は自宅に届かないと思って差し支えありません。
ただしPaidyのApple専用枠を使った高額な取引では、現物の商品が自宅に届いてからの買い取りとしている業者があります。
後払いファクタリング以外で資金が調達できる方法は?
後払いファクタリング以外の資金調達方法としては、以下が挙げられます。
- 通常のファクタリング
- カードローン
- 公的融資制度
法人や個人事業主として資金を調達したい場合には、法的にもクリアになっている通常のファクタリングがおすすめです。
会社員で掛取引を行わない人には、カードローンが選択肢に入ります。
カードローンであれば利息制限法に則った金利が適用され、会社によっては無利息期間を提供しているところもあるので、負担を抑えながら借り入れが可能です。
失業や転職に伴い生活費が不足している人や、障がい者や65歳以上の高齢者が世帯にいる人は、公的融資制度を利用できる可能性があります。
公的融資制度は無担保・低金利で融資を受けられるため、条件に当てはまるなら積極的に検討しましょう。